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Skin Science Column Vol.3 ― 弱酸性が、肌バリアと炎症を守る理由
みなさま、こんにちは。薬学博士の内田良一です。
私はこれまで、皮膚科学やスキンケア製品の研究・開発を通じて、肌の健康を支える仕組みを探求してきました。
前回は、角層がどのように酸性環境を作り出し、そのpHバランスが美しい肌の基盤となることをお話ししました。
今回のVol.3では、その続きとして、弱酸性の角層がどのように肌のバリア機能や炎症抑制を支えているのかを解説します。
角層の酸性環境は、酵素の働き・脂質の生成・常在菌のバランスなど、肌の大切な生理機能に関わっています。
科学的な視点から、その“酸性のリズム”がどのように美肌を守っているのかを見ていきましょう。
角質細胞の剥がれを抑え、バリアを保つ
1.角質細胞の剥がれを抑え、バリアを保つ
角層では、カリクレイン(Kallikrein)やカテプシン(Cathepsin)と呼ばれるタンパク質分解酵素が、細胞間の結合をゆるめて古い角質細胞をはがす働きをしています。
角層の下層では、これらの酵素の働きを抑える阻害タンパク質が酵素に結合し、活性が制御されています。
中層では酸性度が高まり、酵素活性がさらに弱まることで角質細胞の過剰な剥離を防ぎ、しっかりとしたバリア構造を保ちます。
一方、上層では抑制物質が外れ、酸性度もやや下がるため、古くなった角質細胞が自然にはがれ落ちていきます。
※酸性で働く酵素の剥離調節機構は、まだ完全には解明されていません。
2.炎症の発生を防ぐ
角層の下層から中層にかけて、カリクレイン(特にKLK5やKLK7)が過剰に活性化すると、皮膚の炎症反応が誘導されます。
角層が酸性に保たれることで、これらのカリクレインの活性が抑えられ、炎症の発生を防ぐ働きがあります。
つまり、酸性環境は肌を「静かな状態」に保ち、外的刺激に対して過剰に反応しないよう支えています。
3. 透過バリアの形成と強化
角層バリアの主要成分である脂質は、顆粒層のケラチノサイトで合成され、細胞内に前駆体として蓄えられています。
角層への移行時に、酵素によって以下のような変換が起こります。
・グルコシルセラミド → セラミド
・トリグリセリド → 脂肪酸
これらの脂質加工に関わる酵素の多くは酸性で活性化するため、角層が酸性であることが、透過バリアを形成し強化するために不可欠です。
4. 細菌の増殖と侵入の抑制
皮膚には多様な常在菌が存在しますが、酸性環境はそのバランスを保ち、細菌の過剰な増殖や角層内部への侵入を防ぎます。
角層が中性やアルカリ性に傾くと、こうした制御が失われ、炎症や感染が起こりやすくなります。
弱酸性は、皮膚が本来持つ「自然の防御力」を支える重要な条件です。
角層を酸性に保つための基本
角層や表皮の働きを支える日々のケアが、健康な酸性環境づくりの基本となります。
石けんは弱アルカリ性で、ボディソープには弱酸性と弱アルカリ性のものがあります。
洗浄後は、弱酸性のローションで角層にうるおいを与え、角層本来の弱酸性pH(約4.5〜6.0)に戻す流れを助けることが大切です。
まとめ
角層の酸性化は、
・カリクレインやカテプシンによる角質剥離の調整
・炎症の抑制
・脂質バリアの形成
・常在菌バランスの維持
といった肌の根幹的な働きを支えています。
SKINFONIAは、この自然のメカニズムを科学的に理解し、肌が本来持つ「調和の力」を尊重するスキンケアを追求しています。
角層が穏やかに酸性を保ち、内側から整う肌こそが、SKINFONIAの考える“美しく健やかな肌”です。
コラム著者紹介
内田 良一(うちだ りょういち) 薬学博士
東京薬科大学薬学部卒業、同大学院薬学研究科修士課程修了。国内大手化粧品会社の基礎科学研究室にて皮膚科学およびスキンケア化粧品開発に従事。1991年 薬学博士号取得。1999年よりカリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部皮膚科にて研究活動を開始し、研究准教授、研究教授を歴任。2021年にはハリム大学栄養学部で研究教授に就任。同年、「肌ストレス調和理論」に基づく Symfonia Cocktail™ を実現し、SKINFONIA を開発。